雨や風、熱から建物を守り、家の外からの印象を決める外壁は、リフォームで機能性とデザイン性をともにアップさせましょう。外壁リフォームで古民家の寿命を延ばし、古民家の佇まいをより魅力的にしていきませんか。
今回は、古民家の外壁リフォームの施工事例をはじめ、外壁リフォームの主な種類や外壁材の特徴、塗料の色選びについて解説します。
清水区のM様邸です。既存の部材を継承しながら、築80年を超える古民家を建て替えました。和風住宅の多い周辺の環境にも馴染むよう、外壁は漆喰で仕上げました。
古民家の外壁リフォームには、主に3つの種類があります。外壁の状態と希望する仕上がりによって、適切な方法を選びましょう。それぞれのリフォーム方法のポイントをご紹介します。
古民家の外壁リフォームで、まず検討したいのが「塗り替え」です。
塗り替えで使う素材は、もとの外壁が塗り壁の場合は「漆喰」、板張りなら「柿渋」などの天然素材がおすすめです。 古民家の趣を残しつつ、優れた特性で外壁の機能を改善してくれます。
漆喰は現存する歴史的建築物に使用されるなど、古来より優秀な外壁材として用いられています。また、防水・防虫・防腐性のある柿渋は、木材との相性が抜群です。
もとの外壁が板張りで、劣化が進んでいるときに検討したいのが「張り替え」です。古民家の場合、適切な外壁補修がなされていなければ、経年劣化で損傷していることが多く、外壁材そのものの交換が必要になることも少なくありません。
張り替えの際は、横長の板を階段状に重ねて張る「下見板張り(したみいたばり)」という手法を用いるといいでしょう。
板を平坦に張るよりも雨水の浸透を抑えやすく、部分的な補修も可能です。もとの外壁が下見板張りであれば、損傷がひどい部分だけ張り替えることもできます。
カバー工法とは、既存の外壁の上に新しい外壁材を張っていく方法です。壁の解体・処分の必要がないため、張り替えよりも費用を抑えやすいという良さがあります。外壁の内外部に大きな異常がないときは検討してみるといいでしょう。
ただし、壁が二重になることで壁の重量が増えるのが注意点です。壁が重いと地震時に建物にかかる負担が大きくなります。カバー工法では、構造的に問題がないかも必ず確認しておきましょう。
また、既存の壁材に湿気が溜まっていることも多いため、「水切り」や「見切り」といった部分で空気の通り道をつくって内部結露や木材の腐食を防ぐなどの工夫も必要です。
古民家でよく用いられる外壁材のひとつが「漆喰」です。
漆喰は、細かい穴が開いた多孔質構造であることから調湿性能をもち、強アルカリ性という性質から、抗菌作用も発揮します。また天然素材のため、アレルギー症状の原因となるような有害な化学物質を出しません。
耐用年数が長い
漆喰壁の素晴らしい点は、耐用年数の長さです。 適切なメンテナンスをすれば、寿命は100年を超えます。現代の住宅で採用されることの多いサイディング外壁の耐用年数が20〜30年程度、モルタルやタイルが30〜50年程度ですから、漆喰の耐久性が群を抜いて高いことがわかります。
調湿性能によって結露を防いだり、抗菌作用により腐食を防いだりといった漆喰の性質が、古民家の寿命の長さにつながっています。
マットで高級感のある仕上がりになる
漆喰ならではの風合いと質感に、心を惹かれる方は多いでしょう。滑らかでマットな仕上がりは高級感を醸すとともに、優しさやぬくもりも感じさせます。
左官職人が手作業で仕上げるため、塗り方次第で表面の表情が変わる点も面白いところ。 パネル状の外壁材と異なり、継ぎ目がない点も美しさにつながっています。いずれも工業製品では表現できない、自然素材ならではの魅力です。
板張りの壁でよく使われる木材が「杉」です。ケヤキ・ヒノキ・松なども使用されますが、真っ直ぐに育ち加工のしやすい杉は、古くから建材として親しまれてきました。なかでも杉板を焼いて表面を炭化させた「焼杉」は、優れた伝統的な外装材です。
耐久性が高い
杉は耐久性の高い木材です。水や虫に強く、特に表面を炭にした焼杉はバクテリアの分解が進みにくく、木材なのに腐食に強いという特徴をもちます。ただし、炭部分は雨風にさらされると経年によって剥がれてくるため、軒を深くするなどの防護が必要です。
焼いていない杉を使うときは、定期的な塗装をして耐久性を維持します。塗料は、木材に浸透しやすいオイルステイン系がおすすめです。木材に染み込んで着色するため、木目の美しい質感を生かせます。
日本古来の趣深い見た目になる
杉板などの板張りの魅力は、耐久性などの機能面だけでなく、木の風合いを楽しめるところにもあります。 木材は年月が経つと色が変化しますが、それが劣化ではなく味わいになる点が、自然素材の素晴らしいところ。現在主流となっているサイディング壁では出せない趣です。
板張りは近年珍しくなってきましたが、古民家の外壁をリフォームするのなら、ぜひ検討したい外壁材のひとつです。
トタンも古くから壁や屋根に採用されている外壁材です。その歴史は100年以上と長く、現在も現役で活躍しています。
種類も豊富にあり、一般の住宅で使われているのは「波トタン」と「リブ波トタン」と呼ばれるものです。ともに安価で強度が高いという特徴があります。
安価
トタンは他の外壁材と比べ安価で、取り扱いが簡単なので工事日数も少なく済み、リフォームコストを抑えられるという利点があります。予算を抑えて外壁リフォームをしたいというときに検討してみるといいでしょう。
耐震性や耐久性に優れている
価格が安いと性能に不安を感じる方もいるかもしれません。しかし、トタンは一般的な外壁材と比べて見劣りしない耐久性をもっています。 鉄が錆びないよう、塗料の塗り直しなどのメンテナンスをきちんと行えば、長持ちさせられる外壁材です。
また、トタンは薄く加工することができるため、外壁材の中でも軽量です。先述したように、外壁の重量が大きいと家に負荷がかかり耐震性に影響してしまいますが、軽いトタンであれば家の耐震性を維持したまま施工できます。
板張りやトタンを使った外壁では塗装を行いますが、塗料の色選びにもこだわりたいところです。白やベージュ以外のカラフルな色にしたいときは、日本古来の伝統的な色合いの塗料を選ぶと、古民家の趣がいっそう際立ちます。
伝統色には、たとえば「うぐいす色」や「御召茶 (おめしちゃ)」、「胡桃色」や「小豆色」などがあり、少しくすみがかった落ちつきのある色合いが特徴です。
また建築や伝統工芸の世界では、自然との調和をはかるため、あえて人工的に古びた風合いに仕上げる「古色仕上げ/古色塗り」という手法も。古色塗りでは、黒や茶系の塗料を選びます。
天然素材であれば、柿渋、松煙(しょうえん)、ベンガラなどを材料にした塗料があります。 ただ古色塗りは主に寺社で採用される塗装方法で、一般的な古民家では木目を生かした「オイル塗り」がよく行なわれます。古民家再生に詳しい施工会社と相談しながらお気に入りの色を見つけましょう。
外壁リフォームの予算をできるだけ抑えたいとき、DIYを検討される方もいるかもしれません。 たしかにDIYはコスパが良いですが、仕上がりの満足度や安全面の観点から、あまりおすすめできないリフォーム方法です。
古民家はその築年数の古さから、建材の状態や工法が現代の住宅と異なります。劣化の症状に合ったリフォーム方法を選ぶ必要があり、劣化症状は専門家ではないと発見や判断が難しく、材料の選択や施工の難易度も高いです。
外壁工事は高所作業を伴います。訓練を受けたプロでないと、思わぬ事故を招きかねません。また、プロに依頼すれば施工前に外壁で内部結露が起きているか適切に確認できます。もし起きていても適切に取り除いてから施工がされるため、確実に家の耐久性を高めることができます。
これらの点から、古民家の外壁リフォームは、古民家の改修に長けた業者に相談するのが、最も安心かつ満足のいく方法といえます。
古民家を守り、古民家の景観を左右する外壁の重要性やリフォームのポイントをお分かりいただけたのではないでしょうか。
適切な外壁補修は、古民家で心地よく暮らすために欠かせません。
ハレノヒ住まいでは、外壁をはじめ古民家に関連するさまざまなお悩みに対応しています。
古民家の良さを残しつつ、現代の暮らしに合った素材、工法、間取りをご提案し、心地の良い古民家暮らしをお手伝いいたします。古民家についてお悩みのある方は、ぜひお気軽にお声がけください。