• 古民家の基礎知識

日本の古民家の特徴は?現代の住宅との構造や間取り、住み心地の違いを解説!

自然環境に恵まれている、縁側や土間がある、木をふんだんに使った居心地のいい住まい。古民家と一口にいっても人によってさまざまなイメージがあり、具体的にどんな特徴をもつ住まいなのか、いまいちわからないという方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、古民家で採用されることの多い材質・構造・間取りや住み心地の特徴を、現代住宅と比較しながら解説していきます。古民家で自然と共生する暮らしを始めてみませんか。

古民家の特徴・現代住宅との違い

古民家に明確な定義はありませんが、一般的には築50年以上経っている民家を古民家と呼ぶ流れがあります。都心よりも、地方都市や田舎にあるイメージがありますね。

ただ、古民家といって思い浮かべるような伝統的な佇まいは「伝統構法」によるものが多く、これは1950年制定の建築基準法以前の建築方式となります。そのため、築50年の古民家と築100年の古民家とでは、だいぶ趣が異なる点も押さえておきましょう。

そんな古民家の特徴を現代住宅と比べながら、材質・構造・間取り・住み心地の観点から解説します。

材質

古民家は、その時代に入手できる材料を用いて、当時の職人が伝統技術を駆使して建てた住まいです。ここでは、現代住宅と特に違いが見られる屋根と壁の材質についてご紹介します。

かやぶき屋根か瓦屋根

現代住宅の屋根の材質は、金属あるいはセメントを主成分としたスレートが主流ですが、古民家の屋根には瓦や草が使われていることが多いです。

瓦は耐久性に優れ、耐用年数は50〜100年といわれています。この耐久性の高さから、塗装によるメンテナンスが不要な点も大きな特徴です。

一方、ススキやヨシなどの草を材料にした屋根を「かやぶき屋根」といい、かやぶき屋根は通気性と断熱性に優れています。現代では少なくなりましたが、岐阜県・白川郷の合掌造りの家屋が有名ですね。こちらの集落は世界文化遺産に登録されています。

壁は土壁

現代住宅の内壁材には主に石膏ボードが使われており、その上にクロスを張って仕上げます。一方、古民家の内壁は、漆喰や珪藻土などの土を材料にしている点が大きな特徴です。

漆喰は抗菌作用に優れ、かつ強度があるため、適切にメンテナンスすれば100年以上もたせることも可能 です。珪藻土は優れた調湿作用を発揮することから、呼吸する壁といわれることも。いずれも通気性、耐火性を備え、蓄熱性もあるため断熱材のような役割も果たしています

床は畳や無垢材

居室は畳、廊下は無垢材の板張り、というのが典型的な古民家のつくりです。現代住宅でも和室は畳、リビングに無垢フローリングを採用するお宅も多くなってきました。

畳は日本で生まれた固有の文化です。調湿性、保温性、吸音性があり、い草の香りや肌触りがお好きな方も多いのではないでしょうか。無垢材にも調湿性があり、木のぬくもりを感じられます。経年変化を楽しめるのも無垢材ならではの魅力です。

窓には障子

古民家は建具にも特徴があり、その1つが障子です。窓の内側に障子を用いれば、直射日光を適度に和らげつつ、光を拡散する障子紙(和紙)の特性によって、部屋全体を柔らかな光で包みます。カーテンとは異なる透過性が、独特の趣を生み出しています。

障子は、全面に障子紙を張った「水腰障子(みずこししょうじ)」が一般的ですが、ほかにも種類があります。たとえば障子の下半分にガラスをはめ込み、部屋の中から積もる雪を見られるようにした「雪見障子」、そのガラス部分の内側に開閉可能な小障子をつけた「猫間障子」など 。名称にも風情を感じますね。

構造

古民家など伝統的な木造建築物は「伝統構法」で建てられている一方、現代の木造住宅では主に「在来工法」や「2×4工法」が採用されています。この構造による主な違いも押さえておきましょう。

建物の基礎は玉石基礎とコンクリートブロック基礎

伝統構法でつくられている古民家の基礎は、地面に石を置き、その上に柱を立てる「玉石基礎」です。石と柱を固定させないことで、地震時の揺れを逃す「免震構造」になっています。

少し新しい古民家では、石ではなくコンクリートを使った「コンクリートブロック基礎」が採用されていることも。これは鉄筋が入っていない無筋基礎となるため、現代のコンクリート基礎とは異なります。

いずれにしても古民家の基礎はシンプルなので、通気性が良くメンテナンス性に優れています。一方で、材料が劣化していたり新耐震基準を満たしていなかったりするため、補修や補強が必要になることがほとんどです。

ただし、100年以上倒壊せずに残存している古民家があるように、古民家の基礎が必ずしも弱いというわけではありません。

建物は木造軸組み工法で造られている

「木造軸組み工法」とは、木造の建築物において、柱と梁を組み合わせて建物を建てる工法のこと。そのうち、木材と木材のつなぎ目に金物を使わず、「木組み」そのもので耐力を生み出すのが伝統構法です。伝統構法では、壁は単なる間仕切りとして捉えます。

伝統構法による木造軸組み工法では、木の特質を最大限に生かすのが特徴。地産地消の精神から、その土地の気候風土に合った住まいが完成します。そのため、前述したように築100年を超える長寿命な古民家も珍しくありません。築年数が経っても存在感を放つ立派な大黒柱や梁が、その丈夫さを物語っていますね。

現代住宅の「在来工法」も同じ木造軸組み工法になりますが、接合部には金物を使い、柱と柱の間に筋交いを取り付け、壁も構造の一部として考えます。材料にはプレカット加工材や集成材などを用いることが多いです。

間取り

古民家は現代住宅と比べて間取りにも特徴があります。古民家に訪れるとなぜかほっとするのは、ゆとりのある間取りのせいなのかもしれません。ここでは、土間、縁側、ふすまに着目して解説します。

土間

古民家を象徴するもののひとつに「土間」があります。土間とは、屋内を土足で歩けるようにつくられたスペースのこと。玄関や勝手口付近に設けられ、昔は台所や農作業の場として利用されていました。

屋外と屋内の両方の良さをもつ土間は、現代の暮らしにおいても使い勝手のいい空間です。現代住宅でも土間は注目され、土間リビングや土間キッチン、仕事や趣味のスペースとして活用するケースも増えてきました。

縁側

「縁側」とは、居室と屋外の間に設けられた板張りの通路のこと。縁側の上には「軒」があり、雨風や日差しを遮る工夫がなされています。日向ぼっこをしたり、ご近所さんとお茶をしたりといった風景が浮かんでくる方も多いのではないでしょうか。

縁側は、庭などの屋外から家の中に入ることができ、家にいながら外の空気に触れることができる場所です。玄関や土間とは異なった、屋外と屋内をゆるやかに結ぶ役割を果たしています。自然と共生する古民家の特徴が現れていますね。

ふすま

現代住宅はドアで部屋を仕切るのが主流ですが、古民家は「ふすま」で部屋を区切ります。ふすまは取り外しが可能なため、大部屋にすることも小部屋にすることもできる優れた間仕切り。古民家は家族との団らんや人を招きやすいつくりといえるでしょう。

特に自宅で婚儀や葬儀などを行うのが一般的だった時代は、人数に合わせて間取りを変えられる古民家のつくりはとても重宝しました。現代でも、家族の人数や生活スタイルの変化に応じて間取りを変更できる良さがあります。

住み心地

これまでご紹介してきたことを踏まえ、古民家の住み心地にはどんな特徴があるのでしょうか。良い面と悪い面の両方から見ていきましょう。

<良い面>
・大黒柱や梁、土壁や瓦など素材の魅力を味わえる
・天然素材の調湿性や蓄熱性によって、電気エネルギーを使わずとも快適性を保てる
・屋外とのつながりがゆるやかで自然と調和した暮らしを楽しめる
・間取りに可変性があり、家族との団らんを大切にできる
・土間や縁側など空間に余裕があるつくり

特に夏は涼しく、エアコンなしでも過ごせることがあります。天然素材の趣や、家族との団らんを重視した間取りに居心地の良さや癒しを感じる方は多いでしょう。

<悪い面>
・新耐震基準に満たないことから、耐震性に不安が残る
・築年数の経過からシロアリなどの被害を受けやすい面がある
・気密性は低く、スキマ風が入りやすいため冬は寒い
・陽の光が入りにくく、階段が急な場合がある

古民家のこうした弱点は、耐震補強や断熱リフォームをしたり、リノベーションで吹き抜けを設けたりすることで解決できることがあります。古民家に詳しい施工会社に相談してみるといいでしょう。

古民家は地域や用途で特徴が違う

古民家の特徴について解説してきましたが、地域の気候風土や文化によっても特徴は異なります。例として、宮崎県と岐阜県の古民家の特徴とその理由をみてみましょう。

エリア古民家の特徴理由
宮崎県・間仕切りはすべて外し大空間になる仕様
・斜面に建てられている場合、山側に窓がない
・自宅で神楽を行う風習があるため
・落石から家を守るため
岐阜県・合掌造りの屋根は45度から60度の急勾配
・太い梁材を用いる
・いずれも雪の重みに
 耐えられるようにするため

宮崎県のある集落では、冬場に自宅で神楽を行う風習があることから、間仕切りはすべて外せる仕様になっています。立地に応じて造りを変えている点も特徴的です。

岐阜県のような豪雪地帯の古民家では、雪の重みに耐えられるような工夫も。白川郷の合掌造りの屋根も45度から60度という急勾配になっています。

また、農家、町屋によっても構造が異なります。たとえば京都では町屋型の古民家が多く見られますが、道路に面することを重視し、間口が狭く奥行きが長い間取りになっているのが特徴です。いわゆる「うなぎの寝床」というようなつくり。現代の都市型住宅に通ずるものがありますね。

古民家の特徴まとめ

その土地ごとの天然素材を用いて、自然環境や文化に応じたフレキシブルな工法や間取りを採用しているのが古民家の特徴です。その根本にあるのは、自然を受け入れ、自然と共生しながら暮らすこと。そこから得られる豊かさは、現代の住まいでは見出しにくい部分なのかもしれません。

ハレノヒ住まいでは、古民家鑑定士が設計やプランニングを担当させていただきます。古民家だからこそ実現できる暮らしを一緒に叶えていきませんか。

お問い合わせはこちら
054-282-6681

営業時間 9:00-18:00(定休日:日曜日)