古い日本家屋には当たり前のようにあった「土間」。近年その魅力が再認識され、注目を集めています。そこで今回は、土間のメリットや活用方法をご紹介します。
土間のある古民家に住んでいる方は新たな活用方法を、土間のない古民家に住んでいる方もあらためて土間の良さを知り、今後の空間づくりに活かしてみてください。
土間とは、土足で歩けるようにつくられた屋内空間のことです。現代の家に例えると、広い玄関といえるかもしれません。
そもそも古民家に土間があったのは、屋根のある空間で農機具の手入れや脱穀などの農作業を行うためです。外での畑仕事を終え、その足で土間に入って別の作業をできる空間は便利で必要な場所でした。土間の延長には台所や居間が配置されていたので、履物を脱げばすぐに食事をとることもできました。
このように土間は、外からの出入りがしやすい便利な作業場であるとともに、家の内外をゆるやかにつなげてくれる中間的な役割をもっています。
土間の間取りを考えるときは、こうした暮らしの流れに沿い、「屋外と屋内の中間点でやりたいこと」、あるいは「屋外と屋内をひとつなぎにしてやりたいこと」をイメージすると、使い方のアイデアが広がります。
家の外と内の中間点となる土間は、屋外と屋内の両方の良さを併せもつ空間です。ここでは、土間の大きな特徴を2つご紹介します。土間のメリットを知って、暮らしにどう活かせるかをイメージしていきましょう。
屋外とつながる土間は、風通しに優れ、湿気もたまりにくいという特徴があります。高温多湿となる夏場は、土間で作業をすれば快適に過ごしやすく、金属製の農機具や自転車なども錆びにくいため、安心して置いておけるでしょう。
さらに、土間の延長にある空間にも風を運んでくれるため、リビングや寝室など他の居住空間の快適性も高めることができます。また、風通しに加えて日当たりの良い土間であれば、サンルームのような役割も果たします。洗濯物を干してもよく乾き、植物を育てるのにも適した環境です。
土間の床材には、モルタルやタイル、コンクリートなどを使うのが一般的です。これらは汚れや傷に強いため、メンテナンスや掃除がしやすいという良さがあります。
汚したときはサッと水拭きすればキレイになり、泥汚れがついても水で洗い流すことができます。また、外とつながっているためホコリなどはすぐに掃き出すことができ、日々のお手入れも簡単です。
掃除のしやすさは、使い勝手の良さにつながります。汚れを気にせず気軽に使えるのも、土間の魅力のひとつです。
古民家の土間を現代の暮らしに合わせると、さまざまな活用方法が考えられます。ここでは、主な活用方法を4つご紹介します。それぞれのライフスタイルに応じて、自分好みの空間に仕上げていきましょう。
リビングの一部を土間にした空間を、「土間リビング」と呼びます。土間リビングであれば、土間部分でアウトドアなどの趣味を楽しみたい人も、フローリングや畳の上でくつろぎたい人も、同じ空間で過ごすことができます。
さらに、庭と面したほうに掃き出し窓をつければ、庭との一体感が生まれ、より開放的な空間になります。家族だんらんの時間を、より充実したものにすることができるでしょう。
また、土間は外とつながっていることから、人を招きやすいという特徴もあります。広めの土間ならテーブルを置いて、サロンやカフェのテラス席のような空間にすることも可能です。
昔の古民家では、土間は炊事場も兼ねた場所でした。現代では、飲食店のキッチンをイメージするとわかりやすいかもしれません。
土間キッチンは、土足で出入りできる点が大きなポイント。買い物をしたあと靴を脱がずにキッチンに上がれるため、導線が短くなります。庭で野菜を育てていれば、収穫後すぐにキッチンへと持ち込め、土付きの野菜を保管するときも気になりません。
また野菜くずが落ちたり、油で汚れたりしても、掃除がしやすいのでストレスになりにくいです。土間キッチンはお料理好きの方にとって、とくに便利な間取りではないでしょうか。
土間は使い方によって、パブリックな空間にもプライベートな空間にもなるため、仕事場としての活用も有効です。
リモートワークが増えてきた今、ワークスペースを土間にもうけることで居住空間とのエリア分けができ、オンとオフの切り替えがしやすくなるかもしれません。また、来客対応がスムーズにできるため、コンパクトなオフィスにもおすすめです。
そしてもちろん、土間は趣味の空間として最適です。とくにアウトドア系の趣味がある方は、汚れを気にせず過ごせます。庭やガレージなどとつなげれば、さらに楽しみが広がるでしょう。
土間は収納スペースとしても実用性の高い空間です。
たとえば広めのウォークインクローゼットを設置すれば、散らかりやすい玄関まわりをスッキリさせることができます。靴や傘、コートなどをはじめ、三輪車やベビーカー、子どもの遊び道具など、出入り口付近に置いておきたいものをひとまとめに収納できます。
また、自転車やサーフボードなど、家の中では収納しづらい大きなものも、土間収納なら可能です。これらは、見せる収納にしてもオシャレに決まります。
ここまで土間の優れた面を活かした活用方法をご紹介してきましたが、冷えやすいのが土間の注意点です。風通しが良く、床材にタイルやコンクリートなどを用いる土間は、室温が下がりやすい傾向があります。
リビングなどとつなげる場合は間仕切りを設けるなどして、冷たい温度が居住空間に伝わらないよう工夫することが大切です。また、仕事や趣味の空間にするなど、土間に長い時間滞在する場合は、床や壁に断熱機能を持たせたり、薪ストーブを設置したりといった寒さ対策をすることをおすすめします。
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土間に戻す工事をDIYで行うことは、あまりおすすめできません。工事の手順としては、床材を剥がし、下地処理をして、新たに床をつくっていくというものになります。
また、土間と居住空間との境には段差をつけ、外の汚れが室内に入らないようにする施工も行ないます。こうした大がかりな工事には危険性も伴うため、プロの技術が必要です。
ただ、部分的な仕上げ作業はDIYでも可能です。たとえば、障子やふすまの張り替え、キッチンのタイル貼りなどはDIYで行うことができます。どの工程ならDIYで行えるのか、施工会社と相談しながら進めていくといいでしょう。
土間は住まう人それぞれの生活スタイルに合わせて、さまざまな用途で活用できる万能空間です。自分に合った活用法を選ぶことで、暮らしをさらに豊かにすることができるでしょう。リノベーションするときは、天井板をとり、天井裏の梁を見せると古民家の良さがぐっと現れます。
ハレノヒ住まいでは、古民家のリノベーション実績を活かしてさまざまなご提案が可能です。土間をはじめ、古民家の空間の活用を検討されている方は、ぜひ一度ご相談ください。