古民家暮らしへの憧れはあるものの、いざ暮らしをイメージすると、水回り設備に不便さを感じることがあります。その代表格がトイレです。古民家ではトイレが外に設置されていたり、下水道が通っていなかったりすることがあります。
そこで今回は、外のトイレを屋内に移動するリノベーション事例や、古民家に適したトイレの種類、おしゃれにリフォームしたいときのポイントなどを解説します。
はじめに、ハレノヒ住まいが手がけた築100年以上の古民家のトイレリフォーム事例をご紹介します。
代々農家を営むO様邸のトイレは、すべて外付けの汲み取り式でした。トイレに行くためにわざわざ外履きに履き替えなければならず、冬の寒さが大きなストレスになっていたのです。
外に4基あった汲み取り式のトイレを撤去し、室内に最新の水洗トイレを3基設置しました。便器はタンクレス、温水洗浄暖房便座など最新のものを採用。また、農作業中の利便性も考慮し、外に新しく水洗トイレを1基設置しました。
トイレへの導線、掃除のしやすさ、快適性、すべてにおいて大変ご満足いただきました。古民家ではやはり、トイレをはじめとした水回りのリフォームが欠かせません。
下水の処理については以降で詳しく説明しますが、O様邸の地域は市街化調整区域となるため、既存の浄化槽とつなげる工事を実施。古民家のトイレリフォームではよく見られるケースのひとつです。
トイレ自体は最新のものを導入しましたが、内装やインテリアは古民家の趣を尊重しています。無垢材で造作した手洗いカウンターに焼き物の洗面ボウルを配置して、素材のぬくもりを感じられる空間にしました。
また、来客用トイレの床と壁にはタイルを使い、上質な雰囲気を演出。一方、ご家族がメインに使われるトイレはお手入れのしやすさを重視し、掃除のしやすい塩ビ系シートを採用。ただし、石目模様の雰囲気のある柄を選び、古民家と調和する空気感を大切にしています。
古民家は田舎に多いこともあり、地域によっては下水道が整備されていないことがあります。この場合、トイレの選択肢は「簡易水洗トイレ」か「浄化槽式水洗トイレ」の2択になります。それぞれの特徴や注意点を見ていきましょう。
見た目は普通の水洗トイレと同じ
汲み取り式トイレを水が流れるトイレに変更するとき、まず挙げられるのが簡易水洗トイレです。
簡易水洗トイレは、見た目は一般的な洋式トイレと変わりませんが、便器から先は汲み取り式になっています。排泄物と水を溜める便槽と呼ばれるタンクを地中に設置し、溜まった汚水をバキュームカーで汲み取る仕組みです。
簡易水洗トイレは次に紹介する浄化槽式水洗トイレよりも安価なので、予算を抑えたいときにおすすめです。電源を設置すれば、温水洗浄便座にすることもできます。
臭い対策は必要
簡易水洗トイレは汲み取り式トイレよりは臭いが減りますが、汚水のタンクとつながっているため、やはり臭いが気になることがあります。何らか臭い対策をしておくと安心です。
おすすめは、壁紙や壁材を防臭効果のあるものにしたり、消臭効果のある塗料を塗ったりする方法です。リフォーム会社の提案を受けながら進めていくといいでしょう。
簡易水洗よりも臭わない
浄化槽とは、トイレやお風呂、キッチンなどの排水を一時的にタンクに溜め、微生物などの力で浄化し、生活排水として流せるようにする設備のことです。浄化槽式水洗トイレは、この浄化槽とつながったトイレのことをいいます。
簡易水洗トイレとの大きな違いは、汚水を浄化している点です。そのため、簡易水洗トイレと比べ臭いは格段に少なくなります。
場所を選ばず好きなトイレを設置できる
浄化槽式水洗トイレは、下水道の整備がされていない地域でも、一般的なトイレを設置できる点が大きなメリットです。温水洗浄便座や自動洗浄など、最新の高機能トイレも採用できます。
すでに浄化槽がある場合は配管でつなげ、浄化槽がない場合は新たに設置することになります。費用は簡易水洗トイレよりかかりますが、浄化槽の新設・交換工事は自治体から補助金を受け取れるケースが多いです。制度を活用しながら賢くリフォームしていきましょう。
せっかくトイレをリフォームするのなら、内装やインテリアにもこだわってお気に入りの空間にしたいものです。ここでは、古民家のトイレをおしゃれにリフォームするポイントをご紹介します。
壁は空間の印象を決める大事な部分です。無垢材や漆喰などの天然素材を用いると、それだけで古民家らしい素朴な雰囲気に仕上がります。
特に漆喰には調湿、抗菌、消臭作用があるので、清潔に保ちたいトイレにぴったりです。特別なメンテナンスもいらないため、お手入れの手間もかかりません。
できるだけ費用を抑えたいときは、壁紙もおすすめです。和紙風や塗り壁風の壁紙を選ぶと、古民家の良さが現れます。
トイレの床は、水やアンモニア、洗剤に強い素材が適しています。塩ビ系のシートはそれらへの耐久性が高く、メンテナンスもしやすいのでおすすめです。石やタイルの柄のデザインもあるので、古民家のレトロな雰囲気にも調和します。
その他よく使用される自然素材には、御影石やタイルがあります。御影石は塩ビ系シートに比べると高額になりますが、トイレの広さであれば取り入れやすいのではないでしょうか。
トイレの手洗い場の素材にもこだわると、空間のおしゃれさがぐっと増します。一押しは、焼き物でできた洗面ボウルです。小さなものでも存在感があり、空間のアクセントになります。
無垢材で棚やキャビネットを造作し、その上に洗面ボウルを置くと収まりが良くなります。焼き物の洗面ボウルと無垢板の組み合わせは、ハレノヒ住まいでもよくご提案させていただいている人気のアイテムです。
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タンクレストイレは、便器の後ろ側にある水を溜めておくタンクがないトイレのことです。タンクのためのスペースがいらないのでトイレを広々と使え、すっきりとした印象にまとまります。
デザインは洗練されたものが多く、古民家の落ち着いた雰囲気とよくマッチします。また、タンクと便器の継ぎ目がないためお手入れも簡単。トイレ空間をおしゃれかつ快適にしたいときは、トレイの形状にもこだわると満足度が高まります。
古民家ではトイレが外にあったり、汲み取り式だったりと、現代のトイレと異なる特徴を持っていることが多いものです。排水設備の状況を確かめながら適切な方法を選び、暮らしの快適性を追求しましょう。
ハレノヒ住まいでは、古民家のリノベーション全般を手がけています。トイレをはじめとする水回り設備の工事も数々行なってまいりました。それぞれの古民家に応じたご提案をさせていただきますので、ぜひお気軽にご相談ください。