• 古民家の基礎知識

古民家の構造を活かしてリノベーションしよう!耐震性についても解説

現在古民家に住まわれている方、もしくはこれから古民家に住みたいと考えていらっしゃる方にとって、現代家屋とは異なる構造や耐震性は気になるところではないでしょうか。

今回は、古民家の構造や工法、それに伴う耐震性について解説します。古民家の構造を活かしたリノベーション事例もご紹介するので、古民家再生リフォームに興味のある方はぜひお役立てください。

古民家の構造的な特徴

古い建物という点から、古民家の耐震性に不安を感じている方も少なくないでしょう。古民家は現代の住まいとは異なる構造で建てられていることが多いです。構造の特徴を知れば、耐震対策やリフォームすべき部分もわかりやすくなるでしょう。

大きな木の柱と梁が構造のメイン

古民家などの伝統的な木造建築物は、「伝統構法」という建築手法でつくられています。伝統構法の主な構造部材は、大きな木の柱と梁です。

柱と梁は、接合部分に切り込みを入れ、金物を使わず木と木をはめ合わせて組み立てます。

これを「木組み」といい、しっかりとした木組みで建てられた建物は、金属による補強は不要です。

一方、現代の木造建築物の多くに採用されている「在来工法」では、柱と梁を金物で接合。さらに筋交いや構造用合板の壁材を用いることで、壁に強度をもたせて建物を支える仕組みになっています。

免震的柔構造

建物の構造によって、地震エネルギーの受け止め方は異なります。伝統構法が「免震的柔構造」なのに対し、在来工法は「耐震的構造」です。簡単にいうと、免震は揺れを受け流し、耐震は揺れに耐える構造となります。

地震が起きた際、免震的柔構造では建物も一緒に揺れ、地震エネルギーを直に受けないことで建物を倒壊から守ります。

なぜ建物も一緒に揺れるのかというと、伝統構法では基礎として敷いた石の上に柱を乗せるだけの「石場建て工法」でできていることが関係しています。石と柱は固定されていないため地震エネルギーが建物に伝わりにくく、さらに前述した木組みによって、建物に伝わった地震エネルギーを柔軟に逃すことができるのです。

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屋根の3種類の構造

古民家の屋根の構造は、大きく分けて3つの種類があります。現代の住まいに受け継がれる優れた構造なので、リノベーションするときも構造部分は活かせることが多いでしょう。

切妻造(きりづまづくり)

切妻造とは、2つの傾斜面が本を半開きに伏せたように山形になっている屋根のことです。いわゆる三角屋根と呼ばれるもので、現代でもスタンダードな屋根として多くの家屋に採用されています。

建物の短辺側、屋根が八の字のように見える面に入り口をつくったものを「妻入り(つまいり)」と呼び、長辺側に入り口があるものを「平入り(ひらいり)」と呼びます。

平入りの場合は、雨水が屋根の傾斜を伝って入り口側に落ちてくるため、雨樋の設置が必要です。妻入りは雨水が入り口に落ちてくることはありませんが、奥に長い間取りとなるため、生活動線に工夫が必要になります。

寄棟造(よせむねづくり)

寄棟造とは、4つの面が4方向に傾斜している屋根のことです。上から見ると屋根面は、2つの台形と2つの三角形で成り立っています。切妻造の次に多く採用されている構造です。

寄棟造は4方向に屋根が向いているため、風雨や雪などの負荷をバランスよく分散でき、屋根の劣化を防ぎやすいという特徴があります。一方で、切妻造よりも複雑な構造をしているため、建築コストは切妻造よりも高くなる傾向です。

入母屋造(いりもやづくり)

入母屋造とは、寄棟造の上部が切妻造になっている二重構造の屋根をいいます。高級感があり、日本では最も格式高い屋根として重んじられてきました。瓦葺きでできた入母屋造は、法隆寺の金堂をはじめ、各地の社寺建築に広く採用されています。

入母屋造は、切妻造と寄棟造の両方の長所をもっています。切妻造の高い部分と寄棟造の低い部分があることで空気の流れが生まれ、建物の通気性がアップ。木材の腐敗や劣化の進行を抑えます。

床の構造

古民家の床構造は、根太(ねだ)という部材と、大引(おおびき)という部材で組まれています。根太は床材の直下に架けられる部材で、畳や床板などを直接支えています。その根太の下に交差する形で張られるのが大引です。

大引は、1階部分の床を支える重要な構造部材なので、根太よりも太く丈夫な木材を使います。無垢材は時間が経つほど強度を増す性質をもっているため、別の場所で使用されていた立派な木材を、大引として再利用している古民家も少なくありません。

古民家の構造・工法特有の名称や用語

基礎の種類名や各部屋の名称など、古民家ならではの構造・工法をあらわす名称や用語が出てくることがあります。古民家のリノベーションを進める前にそれぞれの概要を押さえておくと、施工業者とのコミュニケーションもよりスムーズになるでしょう。

また、古民家の構造は現代の生活スタイルにマッチする部分も多いため、既存の構造を活かしながらリノベーションすると、古民家の良さをより体感できます。

玉石基礎

玉石基礎とは、石の上に直接柱を立てる基礎のことをいいます。石と柱は固定させません。この玉石基礎による工法が、前述した「石場建て工法」となります。

玉石基礎でできた建物は、地震で揺れた際、建物ごと石の上をすべることで地震エネルギーから逃れる仕組みです。ただし、玉石基礎は現行の建築基準を満たさないため、リノベーションの際には適切な耐震補強工事や、新たに基礎をつくるなどの改修工事が必要となります。

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土間

土足で歩けるようにつくられた屋内空間を土間といいます。主に玄関付近に設けられ、昔の農家の民家では当たり前にあった空間です。

土間のリノベーション方法はさまざまありますが、おすすめは土間の持ち味を活かした方法です。たとえば、土足で出入りできる土間の機能は残しつつ、リビングやキッチンとつなげて「土間リビング」「土間キッチン」にする方法などがあります。

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大黒柱

大黒柱は家の象徴です。玄関から土間に入ったとき、大黒柱を斜めから眺められるように配置されていることからも、大黒柱の存在の大きさがうかがえます。昔の家づくりでは、まず大黒柱を建て、そこから大梁や通し柱などを架けていたほどです。

大黒柱は古民家の強度を保つ重要な構造材のため、虫に食べられにくい木材が使用されています。代表的なのはケヤキ。木材の王様といわれることもあるほど、力強く美しい木材です。

ケヤキ以外では、古いヒノキも適しています。ヒノキは伐採してから100年後に最高の強度に達するといわれており、構造材として非常に頼もしい木材です。ヒノキに限らず、新しい木材より古い木材のほうが強度に優れていることが多いため、古民家リノベーションでは木材の再利用を積極的に行います。

梁・桁

梁や桁は柱同士を水平につなぐ構造材で、屋根や2階の床を支えます。よく用いられる木材が松です。松は曲げ強度に優れており、曲がりを上にして架けることで強度が増します。

梁と桁の違いは、架ける方向の違いです。建物を上から見たとき、建物の短辺に架けられているのが梁、長辺にあるのが桁となります。

差し鴨居

差し鴨居(さしがもい)とは、襖の上に架けられている部材です。鴨居よりも幅が広いため構造材としても機能し、古民家の免震性に寄与します。

また、差し鴨居や鴨居の下部には、襖や障子を引くための溝がほられています。襖や障子はドアとは異なり取り外しができるため、必要に応じて空間を仕切ったりつなげたりすることができます。

さらに、差し鴨居や鴨居には、長押(なげし)という化粧部材取り付けられており、ハンガーやフックなどをかけることが可能。それを利用して、室内干しスペースとして活用するのもおすすめです。

地棟

地棟(じむね)とは、屋根の一番上部の部材の直下に、並行して架けられる部材のことです。屋根の荷重を受け、家の強度を増す役割をもっています。

梁や桁と同じように一本の木でできているため、存在感があります。古民家リノベーションでは、梁や桁と併せて地棟を見せる天井仕上げにすると、古民家の魅力が際立つでしょう。

長ほぞ

ほぞとは柱の先端に造作された凸部分のことをいい、凸部分が長めにつくられたものを「長ほそ」と呼びます。長ほぞを土台や桁に差し込んで接合すると、木組みの強度がアップ。地震で家が揺れたときも、柱が土台や桁から抜けにくく、倒壊のリスクを抑えてくれます。長ほぞは、伝統構法の木組みに欠かせない技術なのです。

土壁

土壁は、土を使って左官仕上げでつくる壁をいいます。日本では古くから採用されてきた壁のひとつです。

土壁の優れている点のひとつは調湿作用です。湿度が高ければ水分を吸収し、乾燥していれば水分を放出します。また、材料となる土は不燃材なので防火機能も備えており、木造建築物の燃えやすいという欠点を補ってくれます。

古民家の構造を活かしたリノベーション事例

既存の構造を活かしたリノベーションは、古民家の趣が残るとともに、家族の思い出も残っていくものです。ここではハレノヒ住まいが行なった、古民家の構造を活かしたリノベーション例をご紹介します。

築130年。農家の家をリノベーション

明治時代に建てられた、築130年超えの農家の家をリノベーションしました。

農作業のしやすさに重点が置かれた間取りから、今の暮らしに合う間取りへと刷新。当初は建て替えも検討されましたが、“残せるものは残したい”という強い想いがリノベーションへとつながりました。

存在感のある大黒柱を活かす

お施主様が建て替えではなくリノベーションに舵を切ったのは、この立派な大黒柱を残すためでした。玄関を入ると左手に大黒柱、正面の上方に大梁がそびえます。

天井板を外すことで古材の存在が一層際立ち、見るたびに心に語りかける素敵な空間になりました。

土間を廊下にリノベーション

玄関からキッチンまでつながっていた土間を、廊下にリノベーション。土足での行き来する負担がなくなり、室内のあたたかさも確保できました。

施工後、特に喜んでくださったのは、プライベート空間ができたこと。安心感を生むことも、リノベーションの大きな役割です。

かつての愛着が今も息づく古民家

こちらは、2世帯で暮らす築60年以上の古民家のリノベーションです。

骨組みのほとんどを活かし、必要な箇所に新しい部材を当て、再び長く住み継いでいける住まいが完成。古民家のリスタートともいえるリノベーションになりました。

既存の建具を再利用

室内空間は、もともと使用していた建具を再利用して、和モダンな雰囲気に。当時の建具職人の見事な技術がそこかしこに光り、空間に上質なインパクトを生み出しています。

白を基調とした明るい空間にしつらえると、より一段と美しさが際立ちます。

梁や軒を残し古き良き味わいを残す

既存の梁と軒を活かすことで、古民家の構造的な良さと、古民家ならではの素朴なあたたかさが残る住まいに仕上がりました。

現代の材料や工法では醸し出せない味わいは、古民家リノベーションだからこそ為せる業です。

ハレノヒ住まいの施工事例は、こちらのページで詳しく紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。

施工事例>>

古民家の構造まとめ

古民家はその趣ある佇まいだけでなく、構造にも現代の住まいと異なる点がたくさんあります。良い点は活かし、改修が必要な部分は専門家と相談しながら適切に対処することが大切です。

ハレノヒ住まいでは、古民家の基礎工事や補強工事を含めたリノベーションを行なっています。敷地や地盤をきちんと調査し、丁寧にご説明しながら設計・工事を進めておりますので、何から着手していいのかわからないという方も、お気軽にご相談ください。

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