• 古民家の基礎知識

古民家を増築・リノベーションすることはできる?

古民家物件を探していると、間取りや広さを自分好みに変えたいと思うことがあります。たとえば、趣味の道具を収納できる納屋を作りたい、「離れ」を作ってお店を開きたいなど、リノベーションや増築で叶えられることはたくさんあります。

しかし、古民家を増築するときには、建築基準法などの法令の制限を受けることが少なくありません。

そこで今回は、古民家を増築するときに必要な準備や手続き、費用相場や注意点について解説します。

古民家の増築に必要な準備・手続き


増築とは、建物の床面積を増やす工事のことをいいます。増築する際は一般的なリフォームと異なる段取りが必要です。まずは、古民家を増築するにあたり必要な準備と手続きについて見ていきましょう。

建築確認申請

増築するときは、自治体や指定の検査機関に「建築確認申請書」の提出が必要です。増築内容が建築関係法規に適合しているかのチェックを受け、承認を得られたら増築工事に着手できます。

きちんと施工会社が設計・工事にあたる場合は滞りなく承認されるでしょう。また、増築する部分が10㎡未満であれば、建築確認申請は必要ありません。

●既存不適格建築物への対応
建築確認申請を伴う増築の場合において、特に注意が必要なのが、原則として既存の建物も現行の建築基準に適合している必要がある点です。つまり、増築する部分だけでなく、家屋全体に対して現行の建築基準を満たす構造・仕様への工事が要求されるということ。

現行の建築基準を満たさない建築物を「既存不適格建築物」といいます。既存不適格建築物とは、建築当時は建築基準法に適合していたものの、法律の改正により新しい基準に適合しなくなってしまった建築物を指すため、古民家に限らず多くの家屋がこれに該当します。そのため、既存の建物に関しては緩和規定が設けられています

いずれにしても、古民家の状態や増築の内容によって異なるため、専門業者に相談して判断することが大切です。

既存不適格建築物の増築等については、国土交通省のページにて詳しく解説されています。

既存不適格建築物の増築等について >>

耐震性の確認

古民家の増築時に必ず行いたいのが、耐震性の調査・診断です。既存不適格建築物の対応においても最も求められるのが、現行の耐震基準への適合です。

わかりやすい例として、2階部分を増築する場合を考えてみましょう。既存の建物の耐震性がなければ、地震が来た際に倒壊のリスクがあることがイメージできると思います。

増築する際は耐震診断を依頼し、必要に応じて耐震補強工事を行いましょう。古民家の耐震補強には、地盤・基礎・柱の補強、耐力壁の設置、屋根の軽量化などさまざまな方法があります。

また依頼する業者は、古民家鑑定士や伝統耐震診断士など古民家の専門家がいる施工会社が安心です

古民家の耐震性と耐震補強の方法とは?費用目安も解説>>

古民家を増築する際の費用

古民家の増築にかかる費用は工事内容によって異なりますが、坪単価は70万円がひとつの目安になります。そのため、増築する床面積によっては1,000万円を超えることもあるでしょう。

あくまで目安ではありますが、以下に工事別の費用相場をまとめましたので参考にしてみてください。

施工内容費用相場(目安)
6畳の部屋を増築する場合約230万円~
トイレを増築する場合 ※トイレ本体含む約50万円~
2階にバルコニーやベランダを増築する場合約40万〜60万円
離れ、納屋約350万円~

これに加え、耐震補強工事が必要な場合はその分の費用が発生します。

ただし、増築の場合でも一定の条件を満たせば「住宅ローン減税」の対象になります。住宅ローン減税とは、毎年末の住宅ローン残高の0.7%が所得税から控除される制度のこと。増築・リフォームにおける控除期間は最大10年間です。上手に活用して節税対策していきましょう。

増築における住宅ローン減税の詳細は、国土交通省のHPを参考にしてください。

住宅ローン減税 >>

また、古民家の住宅ローンについては以下の記事でまとめています。

古民家で住宅ローンは組めない?控除される条件も解説>>

古民家を増築する際の注意点

ライフスタイルに合った住まいにするために増築を検討したものの、法令の制限を受けて増築ができない、あるいは制度の適用除外となり税制優遇を受けられない、ということも珍しくありません。ここでは、建築法令、住宅ローン減税、固定資産税に関する注意点を解説します。

増築ができない場合もある

増築できないケースとして考えられる理由は主に以下の2つです。

・建築基準法などの法令により制限される場合
・建ぺい率・容積率をオーバーしている等の既存不適格物件の場合

①建築基準法などの法令により制限される場合

これまでもご紹介してきたとおり、増築は建築基準法に則って行うことが求められます。特に注意したい法令が「建ぺい率」と「容積率」です

建ぺい率
敷地面積に対する建物面積(建物を真上から見たときの面積)の割合
容積率
敷地面積に対する延べ床面積の割合

これらの割合を踏まえて、建てられる家の面積が決まります。

例)
・建ぺい率50%と指定されている地域:100㎡の敷地に建物面積50㎡まで
・容積率100%と指定されている地域:100㎡の敷地に1階2階の床面積の合計が100㎡まで

そのため、すでに建ぺい率と容積率いっぱいに建てられている古民家や、増築によって指定の建ぺい率と容積率を超えてしまう場合は、増築することができません

また、建築基準法には「接道義務」というものもあり、古くからそこに立っている古民家は現行の接道条件に適合していない可能性が高いです。田舎であればあるほど山や川との距離も関係してくるため、道路関係を含む確認・申請・手続きで1〜2年を要することも。

以上のことから、古民家ならではの申請手続きに詳しい会社に依頼することが重要になってきます

②建ぺい率・容積率をオーバーしている等の既存不適格物件の場合

増築前の家屋が、すでに現行の建ぺい率と容積率などの建築制限を超えている場合は、既存不適格建築物に該当します。建ぺい率と容積率も時代によって改正されるため、新築当初は範囲内であっても、現在は不適応というケースも少なくありません。

既存不適格建築物になること自体はよくあることで、そのまま住み続けることに問題はないのでご安心ください。ただ、増築やリノベーションを行う場合は、現行の法令に準じた内容で設計する必要があります。これを怠ると「違法建築物」となり、罰金などのペナルティの対象に。

違法建築なので当然売却は難しく、相続した場合は相続を受けた人が違反の是正をしなくてはならなくなるため、十分に注意しましょう。

住宅ローン減税の適用を受けるためには条件がある

住宅ローン減税の対象になるためには、いくつかの条件をクリアする必要があります。

以下に、増築で住宅ローン減税を受けるための条件の一部をまとめましたのでチェックしておきましょう。

<住宅ローン減税を受けられる条件>
・住宅ローンの返済期間が10年以上であること
・増改築等にかかった費用が100万円以上であること
・合計所得金額が、2,000万円以下であること
・自己が所有し、かつ居住する家屋の増改築であること
・増築、改築、建築基準法に規定する大規模な修繕または模様替え工事であること
・増改築後の住宅の床面積が50m2以上あり、床面積の1/2以上が居住用であること
・昭和57年以降に建築された住宅であること。ただし、これ以前の建築の場合でも「耐震基準適合証明書の取得」「既存住宅性能評価書を取得」「既存住宅売買瑕疵保険の加入」のいずれかを満たせば適用

No.1216 増改築等をした場合(住宅借入金等特別控除)>>

住宅ローン減税 >>

増築・リノベーションにより固定資産税が上がることも

固定資産税は建物の評価額によって計算されます。評価額は建物の経年によって下がるため、特に築年数の経った古民家は、新築や築浅物件に比べて固定資産税が安いのが特徴です。この点は、古民家ならではのメリットといえるかもしれません。

では、古民家をリフォームした場合はどうでしょうか。建築確認申請の必要のない間取り変更などのリフォームの場合は、評価額に影響することはほとんどありません。一方、建築確認申請が必要になる増築や、住宅の性能、用途が大幅に変わるリノベーションは、評価額に影響することがあります。結果、固定資産税が上がることがあるのです。

古民家を増築する場合は、固定資産税が上がることを考慮したライフプランを立てていくことが大切です。

古民家の固定資産税はいくら?計算方法と注意点を解説>>

増築・リノベーションで理想の古民家ライフを送ろう

古民家を増築・リノベーションする際は、さまざまな条件をクリアする必要がありますが、住まいは生活の原点。ご紹介した情報を活かしながら、理想の古民家暮らしを実現させていきましょう。

ハレノヒ住まいでは古民家鑑定士が設計・施工を管理するため、申請手続きなどもきちんとサポートいたします。安心してご依頼ください。

また、古民家リノベーションの費用を安く抑える方法や実例、耐震性に関わる古民家の基礎についても詳しくご紹介しています。こちらもぜひ参考にしてみてください。

古民家リノベーションの費用や実例!安く抑える方法や手順もご紹介>>

古民家の基礎はどうなっているの?種類や工事方法をご紹介>>

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