夏の日差しを遮り、冬の日差しを取り込む工夫がされている古民家は、季節によって日の当たり方が異なります。そのため、隅々まで明るいというよりは所々に暗さがあり、光と陰の調和を楽しめるのが魅力です。
しかし、間取りや構造、増改築の影響や周辺環境の変化によって、思うような日当たりを得られない古民家も少なくありません。そこで今回は、暗い古民家を明るくするリフォーム・リノベーションのアイデアをご紹介します。
古民家を暗く感じる原因として、間取りや構造、増改築や周辺環境の影響が挙げられます。明るすぎない空間は古民家の良さでもありますが、暗くて過ごしにくいと感じる場合は、原因に合った対策を検討していきましょう。
古民家の間取りは「田の字型」が広く採用され、東西南北に部屋が別れているのが特徴です。
昔は自宅で冠婚葬祭を行なっていたことから、日当たりが良く、かつ人が出入りできる縁側のある南側をパブリック空間とし、北側をプライベート空間とする考え方がありました。
また、古民家は玄関から南北に向けて「通り土間」が設けられているのも特徴です。玄関側(南側)は屋内農作業場とし、奥側(北側)を台所とするつくりが多いため、動線的にも台所に近い北側の部屋をリビングにするのが自然な流れになっていました。
そのため、家族が長い時間を過ごすリビングは、他の部屋に比べて日当たりが悪いと感じるかもしれません。また、単純に古民家は広い家が多いため、部屋の中心まで光が届きづらいという側面もあります。
冷房などの空調設備がない時代は、夏をいかに涼しく過ごすかがポイントでした。そのひとつが、夏の日差しを遮る深い軒。古民家は、室内にたくさんの光を取り込むというよりは、強い日差しを防ぐ工夫がなされているのです。
そのため、現代住宅に比べて差し込む光はやさしく、陰になる部分も大切にします。光と陰の濃淡を楽しむ暮らしは、日本ならではの趣といえるでしょう。
そのほか、増改築によって日当たりが悪くなってしまったり、周辺の民家や山などの環境によって日差しが遮られてしまったりすることがあります。建築当時は日当たりが良かった古民家でも、年月によって採光の具合が変わってしまうこともあるのです。
古民家の間取りの特徴は、以下の記事で詳しく紹介しています。
古民家リノベーションでおすすめの間取り図!ポイントを押さえて快適に暮らそう>>
暗い古民家を明るくするためのアプローチ方法はさまざまあり、主に次の7つの方法が考えられます。
・窓を増やす
・室内の配色を変える
・吹き抜けを設ける
・中庭・テラスを作る
・リビングの位置を変える
・グレーチングで光を取り込む
・照明を工夫する
以下で詳しく見ていきましょう。なお、古民家のリノベーションの費用や実例などは、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
古民家リノベーションの費用や実例!安く抑える方法や手順もご紹介>>
採光を良くするためには、窓を増やすのが最も効率的です。窓を効果的に増やすことで、日中は照明要らずの明るい空間を作ることができます。
天窓とは、文字通り天井に作る窓のこと。屋根の一部を窓にして、上から光を取り込みます。瓦屋根の古民家の場合、瓦の一部を「ガラス瓦(ガラスを瓦の形状にしたもの)」に差し替える工事を行うことで、天窓と同じような効果を得られます。
天井から入る光は、壁に設置した窓から入る光の2〜3倍といわれているため、小さな天窓でも効果は絶大。また、隣家や物置などが接近していて真横から日差しが入らない部屋であっても、天窓であれば採光を確保できますね。
「北向きの屋根に天窓をつけても明るくなりますか?」と聞かれることがありますが、まったく問題ありません。むしろ、天窓は北側がおすすめ。太陽が真上を通らないため直射日光が入らず、代わりに柔らかい光が差し込みます。一方、北側以外の天窓では直射日光を受けるため室内温度が上昇し、暑くなりすぎてしまう場合があるのです。
小さな窓を、必要に応じて複数作るのも効果的です。窓は大きければその分光を取り込めますが、大きな窓は耐震性に影響したり、防犯面でリスクが生じたりすることがあります。
しかし小窓であれば、構造や防犯に関係なく取り付けられることが多いため、リフォームにおいて小窓の設置事例は多数あります。
また、採光が良い部屋の間仕切り壁に、「室内窓」を取り付ける方法も有効です。壁の一部がガラスになることで、隣の部屋まで光を届けることができます。間仕切りが襖という古民家の場合は、襖を格子戸やガラス入りの建具、障子にするだけでも変化を得られるでしょう。
室内を明るくするには、内装の配色も重要です。暗い色は光を吸収しますが、明るい色は光を反射させるため、跳ね返った光で室内が明るくなります。古民家ではもともと、漆喰壁に太陽光を反射させて室内の明るさを保ってきました。
経年で壁の色が変わっている、あるいは内壁が黒っぽい色の板張りの場合は、明るい色に塗り替えたり、明るい色の素材を取り入れたりすると、ぐっと部屋の明るさが増します。
また空間は、高い位置に明るい色があると、広く・高く見える効果があるため、天井付近の壁を白っぽくするのもおすすめです。明るさとともに、開放感も得られます。
2階建ての古民家の場合、吹き抜けをつくり、2階部分に窓を設けることで、効果的に自然光を取り入れられます。高い位置から入る光は階下の奥の方まで照らしてくれるため、家全体を明るくしてくれます。
平家の古民家の場合は、天井板を外して勾配天井にし、高い位置に窓を設けることで、吹き抜けと同様の効果を得られます。
また、吹き抜け窓には開閉タイプと固定タイプがあり、開閉タイプは換気ができる一方で、砂埃などが入り掃除の手間がかかることも。固定タイプは、換気はできませんが、開閉タイプより安価に設置できます。
吹き抜けのある古民家のリフォーム事例│寒さ対策を徹底して冬でも快適な暮らしへ>>
隣家が近いなどで、家の外周に窓を作るのが難しい場合は、思い切って中庭や中庭テラスを設けるのもひとつの方法。中庭に面する壁に窓を設ければ、複数の部屋に自然光を届けることができます。また、中庭は外部の視線が気にならないため、通常の庭よりもプライベートな空間として使うことができます。
採光を良くする目的であれば、1坪程度の「坪庭」もおすすめです。京町家など間口が狭く奥行きの長い民家では、明るさや風通しを確保するために、古くから坪庭が採用されてきました。
中庭を作るときには排水計画がポイントになります。排水の処理が甘いと、台風などの大雨の際に中庭が浸水してしまうことも。また、植栽する場合は定期的なメンテナンスが欠かせません。
「最低限、家族と過ごすリビングだけ明るくしたい」という場合は、採光の良い部屋をリビングにする、自然光が入る2階をリビングにする、といった方法で解決できることがあります。この方法であれば、家具やインテリアの配置換えだけで済むため、コストがかかりません。
ただし、キッチンからの動線や階段利用におけるバリアフリー性などは考慮しておきたいところ。日当たりが良くても利便性が悪いと、家族が集まりにくくなってしまいます。
古民家再生・古民家リノベーションでは、現代の暮らしに合わせて、リビングや水回りの間取りを変更するのが主流となっています。より暮らしに寄り添った間取りを望まれる場合は、古民家に詳しい施工会社に相談してみるといいでしょう。
道路の側溝などで使われる格子状の蓋をグレーチングといいますが、現代ではその機能を活かし、住宅でも採用されています。
グレーチングは格子状になっているため光を透過し、また強度があるため、その上を歩くことが可能です。そのため、吹き抜けや踊り場、床の一部をグレーチングにすると、上階の光を階下に届けることができます。
住宅で使われるグレーチングの素材は、FRPという繊維強化プラスチックが主流。軽量でありながら強度があり、透明感のある風合いは木材との相性も抜群です。
古民家を明るくしたいときに、最も手軽に取り入れられるのが照明です。あたたかみのある照明は、古民家の良さをぐっと引き立ててくれます。インテリア性の高い照明を選べば、お部屋のアクセントにもなりますね。
ペンダントライトであれば、レトロな趣のあるもの、切子細工などの装飾が施されたもの、ステンドグラスになっているものなどさまざまあります。主張しすぎないダウンライトもおすすめです。作り上げたい雰囲気に合った照明を選んでいきましょう。
窓を多く作れば風通しも良くなり、吹き抜けを設ければ開放感が生まれ、中庭や坪庭を作れば緑のある暮らしを楽しめます。日当たりとともに、ご家族が暮らしに求めることを見つめ直し、より良い選択をしていきましょう。
ハレノヒ住まいでは、自然と調和する古民家の良さを生かしながら、日当たりや明るさを考えたリフォーム・リノベーションをご提案させていただいています。どんな些細なことでも構いませんので、お気軽にご相談ください。