日当たりが悪く、湿気が溜まりやすい古民家は「家全体がカビ臭い」と感じることがあります。しかし、ご安心ください。カビが発生する原因を知り、適切な対処をすれば、嫌なニオイを抑えることができます。
今回は、古民家のカビ臭さの原因となる場所をはじめ、カビのニオイを消す方法から再発を防ぐ方法まで詳しく解説します。
まずは、カビが繁殖しやすい条件を見ていきましょう。カビの種類にもよりますが、以下の条件が揃うとカビは活発に繁殖します。
【カビが発生しやすい条件】
・湿度/70%以上
・温度/20%〜30%
・栄養源/ホコリ、食品カス、人の垢などの汚れ
このうち、古民家などの古い家で特に注意したいのが「湿度」です。現代住宅の基礎は、地面をコンクリートで覆うベタ基礎が主流ですが、伝統的な古民家の基礎は、基本的に石と柱でできています。風通しはいいものの、地面の湿気を吸収しやすいのが特徴です。
古民家の立地として多い山間部は、カビが繁殖しやすい環境といえます。雨が降ったあとなどは山の湿気が空気や土をつたって流れてくるため、空気や床下がじめじめとしがち。山の陰に入って日差しが遮られてしまうことも少なくありません。
こうした環境下において、特にカビが発生しやすいのは以下のような場所です。
・畳
・床下
・押入れ
・水回り
・壁
・窓辺
これらの場所は湿気がこもりやすいうえ、素材が湿度を吸い込みやすく、さらに素材がカビの栄養源になる場合もあるため、カビにとって好都合の環境になってしまうのです。
カビのニオイを消すには、カビを取り除くことが先決です。上記でご紹介したカビが発生しやすい場所ごとに、カビを除去する方法と再発防止方法をご紹介します。
イ草でできた畳には、空気中の湿気を吸収・放出する調湿作用があります。しかし、湿気が多い状態が続くと、その分湿気を吸収してしまい、カビが発生しやすい状態に。畳の目にホコリが溜まりやすい点も、カビの繁殖を後押しする原因となっています。
畳のカビを取り除くには、エタノールを使うのがおすすめです。手順は以下のとおりです。
エタノールの代わりに茶がらを使う方法もあります。エタノールよりは除去効果が低いものの、昔から採用されてきた方法です。これらの方法でカビやニオイが取れない、あるいは畳の劣化が進んでいるときは、畳を新調することも視野に入れましょう。
畳のカビ予防では、畳を乾燥させることがポイントです。年に2回ほど畳を天日干し、湿気が多い時期は、エアコンの除湿機能を使って畳を乾燥させます。定期的に乾燥させることで、畳のカビ臭いニオイが気になることは少なくなるでしょう。
畳を干すときは、裏側に日光が当たるようにして干すことで表面の日焼けを防げます。また、日々のメンテナンスも大切です。こまめに乾拭きをして、表面をきれいに保ちましょう。
冒頭でお伝えしたとおり、古民家は地面の湿気の影響を受けやすいもの。床下に溜まった湿気が、家全体のカビの元凶になっている可能性は高いです。床下のカビをきれいに除去できれば、家のカビ臭さもかなり軽減できるでしょう。
床下を乾燥させたり、床下の構造材をエタノールなどで拭いたりすることで一定の効果は得られますが、これだけでは根本解決にはつながりません。カビの臭いを根絶させるには、カビが繁殖した土を入れ替える必要があります。
ただし、床下の土を入れ替えるためには、床材や下地を外し、土を運び出し、新しい土を敷き詰めるという大掛かりな作業が必要です。再発を防ぐために、湿気対策の施工もしておきたいところ。専門業者に依頼するのが、最も確実かつ安心な方法です。
床下のカビ予防対策として有効なのが、土の上に防湿シートを敷く、あるいは調湿材を敷き詰める方法です。土から湿気やカビが上がるのを防ぎます。予算があれば、防湿シートの上にコンクリートを打設するのもおすすめです。
そのほか、床下換気扇を設置し、湿気を逃す方法もあります。ただ、湿気が多い場合は思うような効果を得られないこともあるので、状況に応じて判断しましょう。
古民家の床下の特徴や湿気対策については、こちらの記事でも解説していますので、参考にしてみてください。
古民家に限らず、押入れは湿気がこもりやすく、カビ臭さが気になる場所のひとつです。カビのニオイは収納している寝具や衣類などにも移るため、ニオイが気になったら早めに対処しましょう。
押入れに生えた黒っぽいカビを一掃したいときは、キッチンなどで使う塩素系漂白剤が効果的。手順は以下のとおりです。
塩素系漂白剤を使う際には十分に換気を行い、手袋・マスク・ゴーグルなどを用いて、液剤が身体に触れないようにしてください。また、塩素系漂白剤は木材を変色させることがあるため、気になる場合は、雑巾に漂白剤を染み込ませて拭くといいでしょう。
押入れのカビの再発を防ぐためには、基本的なことですが、換気と除湿がポイントになります。
定期的に扉を開け、換気をする習慣を身につけましょう。また換気をした際に空気がきちんと入れ替わるよう、荷物を入れすぎないことも重要です。
荷物の下にはすのこを置いて、空気の通り道を作っておくといいでしょう。併せて、除湿剤を置いておくと安心です。近年では、炭を使った除菌・抗菌グッズも豊富ですね。
水を使う場所は湿度が高くなりやすく、洗剤カスや皮脂などの汚れがカビの栄養分になることから、カビが生えやすいです。普段から注意してカビの発生を抑えましょう。
まずは、表面についたカビ以外の汚れを落とすことからスタートです。カビ取り剤を使ってカビを落とそうとしても表面に汚れがある場合は、カビ取り剤の成分がカビの奥まで浸透しません。汚れが強い場合は、塩素系漂白剤や重曹を使って落としていきます。
カビ取り剤を使うときは、キッチンペーパーに液剤を染み込ませてしばらく貼り付けておくと、頑固なカビも落としやすくなります。カビ取り剤できれいにした後は、水気を拭き取り、よく乾かすことが大切です。
水回りの中でも特にカビが発生しやすいのが浴室。カビは高温に弱いため、お風呂のあとに50度以上のお湯を数秒かけるだけでも、カビの抑制につながります。
カビの栄養源となる食品カスや洗剤カスが残りやすいキッチンは、やはり日々のこまめな掃除がポイントに。排水口や三角コーナーには、安全性の高い重曹とお酢が役立ちます。弱アルカリ性の重曹と酸性のお酢は混ざると化学反応によって泡立つため、泡が汚れに貼り付いて落ちやすくなります。
以下の記事ではキッチンのリノベーションについて解説しております。「ニオイの悩みもあるけど、キッチンそのものを新しくしたい」と考えている方は、併せてチェックしてみてくださいね。
古民家のキッチンをリノベーション!おしゃれな施工事例をご紹介>>
カビの胞子は常に空気中に浮遊しているものですが、壁にカビが生えた場合は浮遊するカビの量が多くなり、健康被害が懸念されます。過ごす時間が長いリビングや寝室がカビ臭い場合は、早めの対処が肝心です。
壁のカビを取り除く方法は以下のとおりです。
壁用の洗剤には土壁用、木材用などがあるので、壁材に合ったものを選んでください。洗剤を雑巾で拭き取り、換気したら完了です。
土壁の場合は、カビの菌糸が内部まで入り込んでいる可能性が高いです。上記の方法を試みてもニオイが取れない場合は、「塗り替える」という選択肢もあります。
壁のカビ予防も他の箇所と同様に、基本的には換気と除湿がポイントになります。部屋の風通しを良くしたり、エアコンの除湿機能を活用したりしましょう。空気清浄機も役立ちます。
ただ、湿度があってカビやすい条件が揃っている場合は、防カビ性能のある壁材にリフォームする方法もあります。古民家でしたら、漆喰壁がおすすめ。漆喰は強アルカリ性の性質をもち、抗菌作用に優れているためカビが発生しにくく、劣化しづらいため長持ちさせることができます。
古民家の土壁を補修したい!リフォームの方法と費用相場を解説>>
窓周辺の壁や窓枠のカビは、結露が原因で発生することが多いです。古民家の場合、窓枠が木製であることも多いため、結露を放置すると窓枠が腐食してしまうことも。趣のある木製の窓枠を残すためにも、きちんとメンテナンスすることが大切です。
木製の窓枠の場合、カビの除去方法は基本的に押入れと同じになります。
塗装や木材の変色や傷みが気になる場合は、漂白剤を直接吹きかけるのではなく、雑巾に漂白剤を吹き付けて拭く方法も。効果は弱まりますが、その分素材へのダメージを和らげることができます。
窓辺のカビ対策は、日々のお手入れがポイントです。結露によって生じた水分を放置せず、こまめに拭き取るようにしましょう。
あるいは、結露が起こりにくい窓にリフォームするのもひとつです。古民家では、もともとの木枠を活かしつつ、スムーズに施工できる「二重窓(内窓)」がおすすめ。文字どおり窓を二重にすることで、窓と窓のあいだに空気の層が生まれ、室内外の温度差を少なくしてくれます。
また、二重窓は家の気密性と断熱性を高めるため、寒さ対策としても有効です。窓のリフォームの方法については、以下の記事でも解説しています。
カビの繁殖を抑えるためには、こまめなお手入れが欠かせません。しかし、周辺環境により湿気が多い地域では、カビの発生を抑える家づくりにも目を向けることが大切です。
特に、古民家を新たに購入して住まわれる場合は、交換可能な水回り設備は一新するのもひとつです。また、壁も塗り替えたり張り替えたりすることでカビ対策になります。
ハレノヒ住まいでは、日本の気候風土をふまえた古民家リノベーションを行なっています。古民家を長持ちさせる設計・施工で、“住み継ぐ暮らし”をサポートさせていただきます。